「デザイン」がソフトウェア開発を変革する

人間中心設計(HCD)・プロトタイピングがソフトウェア開発の在り方を変える。それは「失敗するシステム開発」を減らす。

ソフトウェアに「使いやすさ(usability)」への要求が増しているようです。ISOでの標準化といった流れは、産業界がその要求に応えようとするものでしょう。そもそも「ユーザーにとっては、UIこそが製品そのもの」であることから、これは当然の流れだと思います。

最近は「人間中心設計(HCD, human centered design)」がソフトウェア開発に取り入れられつつあります。ただ、まだまだ従来型のウォーターフォール型ワークフローへ、部分的に取り入れる場合が多いようです。ソフトウェア開発に人間中心設計を全面導入した会社は少ない。

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人間中心設計をウォーターフォール型ワークフローへ部分的に導入するより、開発プロセス全体を人間中心設計の方法でディレクションするほうが望ましい。言い換えれば、ワークフロー全体にわたって「人間中心」つまり「利用者の観点」を取り入れるほうが望ましいと考えます。

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(意外かもしれませんが)システム開発の「超上流」フェーズから、人間中心設計は役立ちます。なお、ここで「超上流」と呼んでいるのは、「システム化の方向性」「システム化計画」「要件定義」です。

ウォーターフォール型ワークフローの場合、超上流フェーズにおいて、高度な「未来予知能力」が必要です。しかし、完璧な「予知」は無理です。システムは人知を越えて複雑すぎるのです。

それぞれの専門分野で近代的合理主義を批判したアレグザンダーとハイエクに共通するのは、懐疑主義という「人間理性(万能主義)への自己批判」です。対象の絶望的なまでの複雑さを認識し、それを謙虚に受けとめ、「そのうえでどうするか」を考えること。現代社会は複雑であり、少数の専門家・エリートが全体を設計することは不可能であるという事実を認めた上で、「では専門家に何ができるか」と考えること。

アレグザンダーの建築学とハイエクの経済学〜二人のオーストリア人に通底する懐疑主義とradical trustの精神


「システムは複雑すぎて、作る前に全体を完璧に設計することなどできない」という問題は、抜け出せない矛盾に陥っているように見えます。設計してから作るのに、作らないと設計できないと言っているわけですから。

そこで、人間中心設計とプロトタイピング(試作を通じた設計)の組み合わせが有効です。「未来予知」しなくても、実際に試作して、利用者の反応を評価すればいいのです。設計の誤りに気付くのは早いほうがいい。早くたくさん間違えて、より早く「正解」に近づきたい。そういう方法です。

一見、投資総額が膨らむように見えます。しかし、それは錯覚です。プロジェクトの失敗リスクが減ります。プロジェクトの期待成果を、成功確率も加味して計算してください。慎重な試行錯誤でコストが増えたように見えても、成果の期待値や、(確率を加味した)ROIは高まります。これがプロトタイピングに投資すべき理由です。

〔参考:新規事業のIT投資に、より多くの選択肢を残す

ゼロベースは、ソフトウェア開発における人間中心設計(HCD)の価値を説き、実践し、広めたいと考えています。IT業界、SIerの辺境から革命を起こし、ソフトウェア開発のあるべき姿をひっくり返したい。オセロの盤面における大逆転のように。それは「失敗するシステム開発」を減らし、経済の効率が高まり、より豊かな人間生活に貢献するはずなのです。


関連情報:

  • プロトタイピングに適した受託契約形態 - ZEROBASE Journal
  • ISO 9126: ソフトウェア品質の評価に関する国際規格に「使用性(usability)」が含まれる
  • ユーザビリティ: ISO 9241-11 ユーザビリティの定義と、ユーザビリティをユーザの行動と満足度を尺度に規定または評価する場合に考慮しなければならない情報の認識方法を説明した国際規格
  • ISO 13407: Human-centred design processes for interactive systems / インタラクティブシステムの人間中心設計過程, ユーザにとっての利用品質の確保と向上を目指す設計プロセスを確立することを基本的な目的に、インタラクティブ・システムの人間中心設計プロセスを規格化 したもの

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