ネット業界研究(そもそも「ネット業界」とは?)

ネット関連企業をまとめて「ネット業界」と呼ぶのは新聞とトイレットペーパーをまとめて「紙業界」と呼ぶ程度のおおざっぱな議論。

「ネット業界」という括りが、どうにも好きではありません。あまり役に立たないと思っています。ヤフー、グーグル、はてな、ミクシィ、サイバーエージェント、paperboy&co.、チームラボ、ngi group(ネットエイジ)などを一括りに「ネット業界」「ネット企業」としてしまうのは、何の意味があるんだろう、と。ですから、今回の記事では、ちょっと整理してみます。

※自分で言っておいてなんですが→Web業界「広告系」と「IT系」の違い

※お忙しい方は、※ここをクリックして結論部分へジャンプしてください。あるいは、少し時間のある方はネット企業の業態リストをご覧頂ければ幸いです。お時間のある方は全部読んで頂ければ。

  • 新聞
  • 出版社
  • グラフィックデザイナー
  • ティッシュ、紙おむつメーカー
  • 印刷会社
  • 紙商社
  • パルプメーカー
  • 古紙回収業者

これらを一括りにすることはできますか?

「ネット業界」という呼称は、上記の企業群を

「紙業界」

って呼んでるのと一緒です。

同様のビジネスをしてるかどうか、というのは、基本的には「誰に何を売るか(&どこから利益を得るか)」というのがポイントだと思います。その点で「紙業界」と括る意味がどれほどあるか?

ある程度は、ありますが。一つのバリューチェーンで連鎖しているなら。でも、新聞とトイレットペーパーを同じレベルで論じるのはどうかと。

ネット企業の業態リスト

では「紙業界」という括り方の愚を確認したうえで、次は「ネット業界」という括りについて考えたいと思います。

「ネット業界」に所属する代表的ないくつかの「ネット企業」の業態を表にしました。(良い喩えが見つかった順)

ネット企業業態類似業態/企業
サイバーエージェント広告代理店電通
paperboy&co.ホスティング/レンタルサーバ不動産(賃貸)
IIJインターネット接続サービスNTT(電話会社)
チームラボシステム受託開発富士通、NEC、日立、TISとか
ngi group(ネットエイジ)投資業ドリームインキュベータ、JAFCO
ヤフーポータル。メディアを作り、集客し、広告枠を作り、広告収益を上げる。メディア。新聞、テレビ、雑誌
グーグル検索サービス。情報検索の窓口を作り、ユーザに適切な情報を提供する。その際に広告を提示することで検索サービスは無料で提供している。番号案内。広告が入るかわりに無料の。聞いてもないのに「渋谷で居酒屋をお探しなら『ちゃんと』はいかがですか?」ってお薦め(タウンページ広告)してくる104(がグーグルだと思えば)。
はてな総合Webサービス(ある意味ポータル)。個人向け。基本的にはメディア。収益を広告費で得る。一部ポイント課金。(ネット以前のビジネスモデルで似たのが思いつかない)
ミクシィ総合Webサービス。はてなと似てる。(ネット以前のビジネスモデルで似たのが思いつかない)

※その企業を代表する特徴的な事業のみに注目しました。(いろいろやってて、ややこしいので)

認識の違う部分があったらコメントしてください。私とあなただけでなく、それを見る人にとって理解を深める情報になりますので。

結論

「ネット業界」という括りは「ネットIPOバブル」を演出するために金融界が流布したバズワードです。(嘘です、すいません)

要するに「紙」も「ネット」も、レイヤーが低いものです。バリューチェーンでいうと上流。あるいは「素材」に近い。いまは「それ使って何するの?」という時代になっている。紙は既に。ネットはまだ紙ほどではないが、徐々に。

10年前は「ネットを使って何かする」ことが「できる人(企業)」と「できない人(企業)」に分かれていた。だから「ネットを使って何かできる」だけで「ネット起業家」としてお金を集めてIPOできた。

「企業のネット進出」をコンサルティングする、という商売も。最近でいう「SecondLife進出コンサルティング」的な。

でも、「ネット」って、そういうフェーズは終わってませんか?

老舗の旅館がネットでマーケティングやブランディングをしている時代ですよ。多田屋のサイト、インタラクティブで質の高いデザイン。Flashで作られた先進的なサイト。じゃあ多田屋は「ネット企業」ですか? べつに呼ぶのは勝手ですけど、それが「何の意味もない括り」だと思うんです。

もう「ネットを使える/使えない」軸で企業を分類する意味あるのかな?っていう。いまどき「ネットを使えない企業」「ホームページ(website)を持っていない企業」を探す方が難しい。

「紙業界」と普通に言ったら、もはやパルプ、製紙くらいしか連想しませんよね。それと同様に「ネット業界」っていったらインフラ(回線、ホスティング)しか連想しない、くらいの段階にきてる(べきな)んじゃないでしょうか?

新聞とトイレットペーパーを同じレベルで論じるのはどうかと。

うちのブログ読者には「はてな入りたい」「グーグル入りたい」「チームラボ入りたい」みたいな人が少なからずいると思いますが、それらの会社って「ネット企業」というよく分からない接点があるだけで、実際にはまったく違う商売をしています。ちゃんと本業・商売について理解したうえで就職を考えた方が。少なくとも「一般消費者相手(toC)か法人相手(toB)か」とか「メーカーかメディアかテーラー(受託)か」くらい理解しないと。(とくに学生さんとかはこの記事をとっかかりにネット業界研究してください)

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「企業がWebサービスを作る」ということは、「商売の仕組み(システム)を作る」ということです。 例:事業としてのWebサービス Yahoo! Japan、楽天市場、mixi、はてな、モバゲータウン、ユニクロオンラインストア 反例:広告・広報としてのWebサービス ecotonoha、家紋ジェネレータ(綾鷹) 反例:個人、非営利のWebサービス 脳内メーカー、電子政府の総合窓口 ※そもそも「WebサービスではないWebサイト」も多く存在します。キャンペーンサイトやコーポレートサイトなど。それは上記のリストに入れてません。→参考:ネット業界研究(そもそも「ネット業界」... 続きを読む

コメント(2)

DATE: 2008/02/29 01:34:00
面白いエントリですね、長々と拝読させて頂きました。

はてなとmixiは、リアルでの似たサービスが思いつかないとの事ですが
これって宗教ビジネス・ネットワークビジネスと似てませんかね?
自前のコミュニティの顧客(信者)から対価を得ているという形では似ているような...

はてなのサービスはどれも競合他社がやってるサービスに
自社ブランドを乗っけたもの+自前のコミュニティという
付加価値を提供しているものですし。
あと2ch(ニコニコ動画)も近いかな?
いずれも「サービスの優位性」というより、
コミュニティそのものが経済的な価値をもっている様に思います。

> いずれも「サービスの優位性」というより、
> コミュニティそのものが経済的な価値をもっている様に思います。

なるほど、そうですねー。そういう面は、けっこうありますよね。

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