ちょっと待て、そもそも「ベンチャー」ってのはなぁ・・・(身の丈ベンチャー)

ちょっと待て、そもそも「ベンチャー」ってのはなぁ・・・(導入) @ ZEROBASE BLOG (2008年03月09日)から始まる一連の連載にブックマークなどの反響を頂き、ありがとうございます。自分が頑張って書いた文章に、賛同であれ批判であれ、反応を頂けるのはとても嬉しいことです。これからも頑張ります。

さて、いろいろ拝見していて、補足する必要を感じました。

ちょっと待て、そもそも「ベンチャー」ってのはなぁ・・・(導入) @ ZEROBASE BLOG (2008年03月09日)

「狭義のベンチャー」の定義:ベンチャーマネーから創業資本を調達したことにより、会社設立時点から投資家への還元(おもに上場か事業売却)という出口(exit)が義務付けられた会社

(この時点で37signalsは狭義のベンチャーではない。一方でJason Calacanisはベンチャー起業家。だから議論がかみ合わないのです。)

おさらいですが、連載では「成長産業におけるベンチャービジネスの典型的な成功パターン」とか「ベンチャーマネーで資本調達し、成長産業でシェア1位を取ることにより上場を目指す本格派ベンチャー」とか「メガベンチャー」といった表現で、いわゆる急成長ベンチャー(high growth venture)について書きました。

一方、同じ「ベンチャー」とはいっても「身の丈ベンチャー」(life style venture)というのもあります。要するに上記の「定義」に該当しないベンチャー(の一つの形態)。

身の丈ベンチャーとは

第12回 まずは、アイデアの創出!:コラム(終了) - CNET Japan

私は起業対象のビジネスを2種類に分類しています。ひとつは、既に市場が存在しているところに、いままでとは別の方法で参入するパターンです。もうひとつは、市場そのものがまだ存在していない、まったく新しい市場創造をたくらむパターン。当然ながら後者のほうがハイリスク・ハイリターンです。そして、私は、後者のほうがより「創造的」で「偉大な」起業家だと思います。が、現実にはよりハードルは高いのもまた当然です。

On Off and Beyond: ベンチャーと中小企業の違い

なお、シリコンバレーに住所がある技術系の会社だからといって、どれもがhigh growth ventureなわけではない。経営の箸の上げ下ろしまでこまごまと口を出してくる外部資本(ベンチャーキャピタル)などいれずに、自分の好きなペースで仕事をしたい、という「中小企業」型会社だってある。そういうのは、「small business」。またの名を「life style venture」という。「世界制覇」の野望より、「小さくても一国一城の主となって働きたい」という「ライフスタイル欲求」を実現するための会社、という意味。

Craigslistや37signals LLCなどが代表格。

ビジョンの壮大さ、チームの情熱という意味では確かに「ベンチャー」。でもワーカホリックではない。そんな感じの働き方が「身の丈ベンチャー(life style venture)」。

とはいえ、あくまで「ベンチャー」です。ただの中小企業(=世の中に代わりがいくらでもいて、換えがきくような)ではない。ユニーク(unique)つまり「世界に一つ」を目指す気概が共通していると思います。よく言われる「ナンバーワンよりオンリーワン」です。ベタですが。

※ちなみにZEROBASEもこっちです。なので、よく「ZEROBASEは狭義のベンチャーではない」と書くのですが、しかし業界・世界に影響を与えたいとは思っています。同業の会社の経営やサービスに対して。うちの場合は商品ではなくサービスの分野ですが。

こういう身の丈ベンチャーたちに共通するのは「こつこつやること」ではないでしょうか。あまり「産業・市場の成長」に乗ろうという意識もないかもしれません。単に、良いものをこつこつ作る。とくに、「シンプルに」という方向性。これは結果的にイノベーティブになるケースが多々あります。

37signals路線が良いのは、「すでに大きな市場(マーケタビリティが実証済み)」かつ「ユーザを置き去りにした製品高度化競争が起こっている市場(破壊的イノベーションの余地がある)」という方向に自然に行きやすいからだと思います。

これは西川氏の言う「既に市場が存在しているところに、いままでとは別の方法で参入するパターン」で、そこでは「破壊的イノベーション」が一つの勝ちパターンになるようです。

こういう話は「イノベーションのジレンマ」などクリステンセン教授の本などに詳しいです。

時間が流れるスピードの違い

成長期の激しい競争とは違って、すでに成熟した産業・市場に新しい形で参入するときには、あまりスピードは要りません。成長期には3ヶ月の差が致命的になるかもしれませんが、成熟期には1年くらい大差なかったりする。ですから「こつこつ」やっても大丈夫、という面もある。

こつこつやるしかない、という面もある。すでに成熟した市場で既存製品の価格は下がっていて、新規参入してもうまみ(粗利益率)は少ない。その状態で新規参入の投資を回収することを考えると、必然的に何年もかかる。つまり「こつこつ」やるしかない。そういう事情もありますね。

具体例は37signalsのBasecamp。彼らの参入時点でグループウェアなんて山ほどあったし、とくにガリバーもいました。MicrosoftとLotus(IBM)の二強。その状況で「自分ならやったか」と考えてみてください。ふつうの、賢い、まともな頭の持ち主なら、新規参入の余地は無いと考えます。しかし、彼らには新しい市場が見えていた。その点で、とてもクレイジーだし、ベンチャーです。彼らは実際に、新しい顧客を、市場を、みずから創り出すことに成功した。仮説を証明できたんです。

ただ、お客さんがいたのはいいとして、最初から一月あたり数ドルという少額では、どう考えても赤字スタートです。しかし、その値段でしか売れなかったでしょうね(成熟市場では)。だから、こつこつ頑張る。何年かやってると、あるとき損益分岐点を超え、単月黒字を経て、投資回収し、以降は利益を生む事業へ(金のなる木)ということでしょうけど、そこまで3〜5年くらいかかってるんではないでしょうか?

そこで必要なのは、半年間死ぬ気で働く、といった「瞬発力」ではなく、こつこつマイペースに走り続ける「持久力」だと思うんですね。要するに「狭義のベンチャー」とは必要な能力が違うのではないか、と思っています。そこでは、半年なら妥協できる環境なども解消したうえで、長年こつこつ気持ちよく仕事することを考える能力も必要。だからライフハックとかにも傾倒する。

また、こつこつやる、やれるから「地道に改良し続ける」という開発スタイルが合っている。その点で、SaaS型で「使った分だけ払ってもらう」という37signalsのビジネスモデルは「身の丈ベンチャー」に合っている。(売り切り商品と違って、開発費を「投資(資産)」ではなく「ランニングコスト(費用)」として継続的に投じやすい)

身の丈ベンチャーこそデザインを

で、ずーーーーっと思ってるんですが、「破壊的イノベーション」って「デザインによるアプローチ」が極めて有効な領域だと思うんですよね。高機能化・高性能化の競争が行き詰まったときに、新しい競争軸を「ユーザ視点で」創り出すこと。これはふつうにUCD(ユーザ中心デザイン)の活用できる領域なのです。

といった「仮説」をもとに、ゼロベースという会社はデザイン主導型のWebサービス企画・開発のアプローチを研究しています。誤解の無いように、我々の言う意味での「デザイン」とは製品そのものの、ありようのことです。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://zerobase.jp/mt/mt-tb.cgi/230