インタビュー記事(Webエンジニア武勇伝)

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4月に取材されたWebキャリアさんのインタビュー記事が掲載されています。全体で約1万字ありますが、Webエンジニアの方に読んで頂きたい部分は最後の第6章「若いエンジニアへメッセージをお願いします」の約2千字。この連載には、もっとすごい方々が出てます。私のインタビューを全部読むより、ほかの方のを読んでください。→Webエンジニア武勇伝 第27弾 石橋秀仁 氏 | ゼロベース株式会社

以下、記事の内容に補足します。

■第3章「フリーランス時代の模索」

エンジニアで優秀な方は独立志向が高い場合も多く見かけます。仕事(作業)そのものが個人主義に向いているからでもあると思います。独立経験の一例としてお話ししました。

ちなみに、インタビューではお話ししませんでしたが、エンジニアが独立してから「こんなはずじゃなかった」となるケースで目立つのは、自分で営業、経理、総務などすべてのバックオフィス業務をやらなくてはならないために、好きな仕事(開発)が思うようにできないことです。管理職になるのがイヤでプログラミングだけをしたくて独立した人の多くが、会社勤めの時よりもプログラミング作業の時間が減ってしまう。「こんなはずじゃなかった」となるわけです。(ですから、個人事業主になるかわりに、完全歩合制の会社に転職する、というのも有力な代替案でしょう)

企業に勤めた経験しかない人は、独立して初めて、じぶんがいかに多くの社内サービスを享受していたか(誰かに助けてもらっていたのか)に気付くようです。

第3章の後半(「エンジニアは世の中に山ほどいるので普通にやってたら勝てない」以降)は、べつに読まなくてもいいと思います。新しい領域をでっちあげて、そこでいちばんになればいい、という発想ですね。そこでWebエンジニアリングとデザインと事業企画のAND領域を選んだという話です。

第3章の関連記事をあげておきます。

■第6章「若いエンジニアへメッセージをお願いします」

川井:最後に若い方にメッセージをいただきたいのですが、エンジニアでキャリアが見えないという方が多くいると思うんですが、どんな風に考えたらいいかアドバイスを戴けたらありがたいのですが。

私自身はハッカーでもギークでもないので、ロールモデルになりません。一方、ハッカーでもギークでもないからこそ、意外な視点が提供できる可能性はあるので、そういう発言を心がけました。

石橋:サラリーマンの実態を見て思うのは、ちゃんと給料が貰えて、それが水準が高くて安定していると、「これでいいのか……??」って思い始める(※注:「人がいる」)傾向があるようなんです。変化とかチャレンジとか、ある程度危機がないと駄目で、一生楽しく勤められる会社っていうのは、穿った見方かもしれないですが、「危機」が仕組み化してあるというか、演出されているのかなと思います。

ちょっと『戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ』から引用してみましょう。

■戦略ノート−ルート3症候群

業績の悪い企業は内部が不安定だと思われがちだが、むしろ逆のことが多い。ルート3企業は、低いレベルで社内が妙に落ち着いてしまう。たとえ不安定さが残っていても、それは「後ろ向きの不安定さ」で、さらに人が辞めるとか社内にもめごとが起きるといった事態だ。それが終わるとさらに静かになる。

こんな会社のトップの座について、お説教をしたり、我慢強く社内の「調整」と「コミュニケーション」にいくら時間をかけても、何も起きない。

本当に会社をよくしようと思ったら、このへんなバランス状態を戦略的に突き崩すしかない。現象的には良くも悪くも社内をガタつかせるような積極的な手を、次々と(しかし、組織が一度にどれくらいの変化を消化できるかをはかりながら)打ち出していかなければならない。つまりトップの役割は、この場合も組織のアンバランス化である。

このように会社を強くするためには、組織の適度な不安定化が常に必要である。しかし、それが最大の効果を発揮するためには、同時または先行して、社内に向けて戦略目標が提示されていなければならない。皆がそれに向けて努力を結集し始めた時、組織のなかに「ゆらぎ」が生まれ、それがさらに大きなアンバランスを受容する素地となる。だから問題は、当面の戦略目標をいかに設定し、組織のベクトルを束ねられるかどうかである。(pp.120-121)

日本の大手SIerのトップ層には、本物の経営者が何人いるんでしょう? いまの経営陣で、環境の大きな変化(※)に適応し、生存できる会社はどれくらいあるのでしょう? (※例えば、ユーザ企業によるITのインハウス化が急速に進むといった事態が仮に起こったとして)

次の部分は「『危機』が仕組み化してあるというか、演出されているのかなと思います」の続きです。

僕は、SIerやITベンダーにはそういうのが無いと思うんですね。多分エンジニアのせいじゃなくて、構造的な問題で、国策の間違いというか人月にしてしまったっていうのが結構根深いかなと。経営しなくても成り立っちゃうんですよね。現場の人は品質の高い経営の会社ではない、形だけでかい企業にいるから先が見えなかったり不安になったりするんだと思うんです。

「経営しなくても成り立っちゃう」のは、ほとんど実態が「人材派遣」だからです。これは下請け「協力会社」の話ではなく、プライムも含め。大半のSIerは人材派遣業だと思っています。現場には優秀な人もたくさんいると思うんですが、相対的に経営陣はどうかなあと。戦略発想ありますかね? 「SIerを経営する」とか「SIerの成長戦略」とか「SIerの戦略転換点」ということを1ミリでも考えたことのある人がSI業界全体に何人いるんだろう、というくらいに思っています。

次に、SIerとベンダーでのキャリアの違いについて少し。

石橋:「Oracleを極めたい」と言ってSIerにいるよりは、Oracleに行ってOracleを作るとか、次のDBベンダーを作るなりベンチャーに入るなりして、次のDBアーキテクチャを自分で作るとか、その方が面白いはずだし技術的にもレベルが高い仕事ですよね。SIerっていうのは、コアな技術を高めても会社として必要なものではないから高いお金も払えないし、Win-Winにはならないんですよね。

エンジニアが特定領域に特化した高い技術を持っているほど、その技術に見合うベンダー水準の報酬を支払えないのがSIerではないでしょうか。構造的に。(※そういう人を「囲っておく」ことのブランディング効果など、間接的な意図で高い報酬を支払って慰留することはあるかもしれません。SIといいつつも意識はベンダー的な会社もあります)

参考までに、あるカンファレンスでの発言を引用します。

「担当する製品について世界で一番詳しくなるのが仕事なので、自由な時間で勉強できる。それがやりがい」(※注:日本オラクル柴田竜典氏)と説明すると、岩佐氏が「部品について詳しくなりたい人はベンダ、全体を見てコントロールしたい人はSIerが向いているかもしれない」とまとめた。

「IT企業はほんとに泥のように働かされるのか」——東大でイベント − @IT

あと、「直感は正しい」とか「SIer辞めても後悔しないはず」とか無責任なことを言ってます。テキトーです。人のいうことを鵜呑みにするような知的レベルの低い人はこのインタビュー記事を読まないはずなので、それまで考えもしなかったような選択肢を増やすことができればいいなと。「ハッカーでもギークでもないからこそ、意外な視点が提供できる可能性」で。

※余談ですが、私自信が直感に頼るのは、選択肢を出すところと、初期に絞り込むところです。最終的な決断を直感だけで決めたりしません。つねに最悪ケースを想像するパラノイド(病的心配症)を自覚しています。

私自身の考え方は、懐疑主義です。成功した経営者の持論でも、合理的でなければ否定します。仕事は結果より過程が重要と考えます。馬鹿な成功者より、賢い失敗者のほうに共感します。バクチは嫌いで、手堅い経営を好みます。成功する可能性に賭けるというより、失敗しないために手を尽くすタイプですね。

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関連情報

結び。

石橋:(私は)エンジニアの人のモデルには、直接的にはならないと思うのですが、僕は違うところから見ていて思うSIのひずみとか、歴史的経緯からそろそろ寿命じゃないか、というところしかアドバイス出来ないですが、そういう意味で不安とかモヤモヤとかを見逃さないで、それがいい方向で解消すればいいし、しなければどこに行くべきか考えた方がいいということは言いたいですね。

というわけでWebエンジニアとしてのキャリアを考える一助になれば幸いです。くどいけれど私自身はエンジニアを辞めた人間なのでロールモデルにならないと思いますが、「Webエンジニア武勇伝」の過去のインタビュー記事のなかには、あなたのロールモデルがあるかもしれませんね。

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このページは、ishibashiが2008年7月24日 17:52に書いたブログ記事です。

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