危機感とサバイバル(雑誌「エンジニアtype」インタビュー)

エンジニアtype 2008年11月号(p.45-48)に掲載されています。Webでも読めます。→ひと足先に選ぶ次世代のMVE - エンジニアの転職は@type

typeさんの仕事には問題ありませんでしたが、私の説明が不十分だったので、ここで補足したいと思います。

経営ビジョンは「とにかく生きること」

これは誤解を招く表現だったと反省しました。食えれば商売の中身や方法はなんでもいい。そう考えているようにも読めてしまう。「とにかく」といっても、節操なく何でもやろうというわけではありません。むしろ、強く目的意識を持ちたいと思います。

■我々はなんのために生きるのか

我々ゼロベースは、ユニークな考えを持っていること、それが社会に役に立つことを信じています。それを世界に向けて発信し続けるだけでなく、自らの手でも実践したい、我々にしかできない方法で世の中に貢献したい。こう信じることは妄想かもしれませんが、実際に妄想かどうか診断を下せる医者は我々自身ではなく市場です。我々は市場から売上高という数字で評価され、それを謙虚に受けとめることで、我々が真に役立っているかどうかを知る。(※ここでの「市場」とは、株式市場のことではなく、財が取引される場、市場経済の意味です)

我々の価値観とはいかなるものか、それについて論じるよりも、我々が作るもの、我々の活動そのもので表現していきたい。ユニークな考えほど、裏付けがなければ、いかがわしいものとして受けとめられますから、先に言葉を尽くして説明するより、まず証拠を示したい。例えば「刺身のUIデザイン」という文章は、コマーシャライザーを作ったという証拠の有る無しで、ずいぶん説得力が変わるでしょう。

このように、我々の考えを発信し、世の中に影響を与えていきたいのですが、そのためには、まず我々自身が生存の基盤を確立し、生存し続けることが必要です。力を蓄え、将来に備えることも必要です。

しかし、現実は過酷です。我々は、たった4人の小さな会社で、親会社も有力者の後ろ盾もありません。我々は経済という荒海に頼りなく浮かぶ小舟のようなもので、舵取りを誤った瞬間にすべてが終わります。危機感だけが、舵取りの緊張感を持続させてくれます。つまり、我々は危機感を失った瞬間に消えて無くなる、危機感は生存の要件です。

個人として生き延びるだけならば、ゼロベースという会社が潰れたところで、どこかに職を探せばいい。しかし、我々にしかできない、と我々が信ずることをやるために、我々は存在します。だから我々は、どんな大波が来ても我先にと逃げ出すことなく、乗り切ろうと努力します。

できれば大波を安心して乗り越えられるような船にしたいものです。ただ、それは船を大きくするという手段ではなく、操舵術の卓越によって。大船に乗った気持ちで安心することは慢心につながります。浮沈船タイタニックを沈めたのも慢心だったのではないかと思います。

常に危機の側に身を置くことで、自らの安全を保障する能力を得る、これがサバイバルの考え方です。私が「とにかく生きること」と言ったのは、こういう意味です。

最後に、危機感ばかりが叫ばれる息苦しい会社だと誤解されないよう、付け加えておきます。我々は危機感と未来志向を同居させなければなりません。いつも危機感ばかり口にしては、緊張して柔軟さを欠くことになり、良い結果は得られにくい。危機感は動き出す動機になりますが、推進力は未来志向から得るべきです。危機と同じ事象を機会と捉え、リラックスして前向きに楽しむことが、良い結果につながりやすい。

我々はアイデアの発想力を売りにしている会社であり、ユーモアやクレイジーさは我々の仕事に役立っています。例:うまっぷPollanエア新書

■今回の取材で学んだこと

記事内容がインタビューを適切に表現したものであったとしても、自分が話した内容に問題があれば、誤解を招く記事になる可能性がある。それはインタビュアーやライターの責任ではなく、「自分の発言に責任を持て」という話でしかない。どんなに優秀なプロセスでもゴミをインプットされたらゴミしかアウトプットできない(garbage in, garbage out)。ゴミをインプットする奴が悪い。

なぜ今回の件で十分な説明をしなかったかというと、つまらない話だからと省略したのです。しかし、省略すべきでなかった。読者は自分の発言を好意的に解釈してくれるとは限らないという認識が甘かった、PRにおけるリスクマネジメント力が足りなかった、これから「世界に向けて自分たちの考えを発信し続けること」に取り組むうえでPRの能力を身につけなければならないと感じました。

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