新規事業の不確実性

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前回のつづき)

そのうえで、新規事業において低コストを実現すべき理由とは「そうする必要があるから」です。「お金がないから」ではないのです。お金が余っていても、低コストを実現すべき。たとえ大企業でも、新規事業においては、そうすべきなのです。

■新規事業の不確実性

さて、新規事業投資には「リスク」があると言いましたが、これは「リスク」というより「不確実性」というべきかもしれません。

「あるサイトをオープンする」という事象は一度かぎりであり、二度と起こりません。ですから、厳密な意味では、統計値としての確率は計算できません(記述統計)。もちろん、他の類似ケースや、これまでの経験などから、主観的確率を推論することはできます(推計統計)。とはいえ、あくまで信頼性の低い推論でしかないことに注意が必要です。

これは私なりにいろいろ考えた結果です。確率計算が可能な「リスク」ではないかと思ってモンテカルロ・シミュレーションの導入を検討したこともあります。でも、あまり役立ちそうにない。

私自身が関わる案件の規模は小さく、投資も少額で、サイクルも短い。ですから、新規事業のダウンサイドとアップサイドのリスクを把握するだけなら、Excelのシナリオ分析で十分でした。

そういうシミュレーションよりも、むしろパラメータやシナリオの数を減らして「鋭い仮説」を立てることに注力した方がよいと思います。そうすれば、モデルが簡単になり、頭の中でもシミュレーションできます。仮説検証のモデルがコンパクトならば、現場で臨機応変に方針転換することもできます。仮説検証サイクルが高速になるのです。

遠い先のことは分からない。近い未来なら予測できる。間違っていたら方向修正できる。だから問題を小さく分割しよう。フィジビリティ・スタディを段階的に実施して、ときにA/Bテストで時間を節約して、仮説検証していこう。いわばイノベーションの技法を身につけて不確実性に対処しよう、と。

正確な未来予測は無理なので、「いかに早く、間違いに気付くか」を追究します。「できるだけ早く、たくさん失敗しろ」というルールです。高速な仮説検証サイクルで、これを実現します。

そうでもしなければ、新規事業はビジネスではなく、ただのバクチです。プロフェッショナルは運任せにしません。再現性のある科学的な方法を用います。

新規事業は「どうすれば、どうなるか」という因果関係がよく分からないブラック・ボックスです。ならば仮説検証型で解明していくしかありません。どういうインプット(行動)によって、どういうアウトプット(結果・反応)が得られるか。ブラック・ボックスの振る舞いをデータとして集めることで、ブラック・ボックスの特性を理解する。新規事業の科学的方法とは、実験科学的アプローチなのです。制御理論におけるシステム同定のようなものだと考えています。

■おわりに

今回は「どこまで東京?」というサイトを題材に、企業がWebビジネスの新規事業へ投資する際の考え方について述べてきました。具体的には、ローコストを追究する必要性と、具体的にどこまで追究できるかについて論じました。

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このページは、ishibashiが2009年2月 9日 18:37に書いたブログ記事です。

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