新規事業の不確実性

極限までローコストで、新規事業をスモール・スタートする方法についての考察 (7):不確実性に対処する方法

目次

  1. Webビジネス新規事業への賢い「アジャイル」投資術
  2. 新規事業投資、どこまで削れるか
  3. 新規事業のIT投資に、より多くの選択肢を残す
  4. 新規事業のリスクとコスト構造
  5. システム力に勝る「人間力」(手運用)
  6. 戦略的コスト構造を武器に
  7. 新規事業の不確実性

新規事業の不確実性

さて、新規事業投資には「リスク」があると言いましたが、これは「リスク」というより「不確実性」というべきかもしれません。

「あるサイトをオープンする」という事象は一度かぎりであり、二度と起こりません。ですから、厳密な意味では、確率計算(記述統計)できるのかどうか疑問です。もちろん、他の類似ケースや、これまでの経験などから、主観的確率を推論することはできます(推計統計)。とはいえ、あくまで信頼性の低い推論でしかないことに注意が必要です。

これは私なりにいろいろ考えた結果です。確率計算が可能な「リスク」ではないかと思ってモンテカルロ・シミュレーションの導入を検討したこともあります。でも、あまり役立ちそうにない。

私自身が関わる案件の規模は小さく、投資も少額で、サイクルも短い。ですから、新規事業のダウンサイドとアップサイドのリスクを把握するだけなら、Excelのシナリオ分析で十分でした。

そういうシミュレーションよりも、むしろパラメータやシナリオの数を減らして「鋭い仮説」を立てることに注力した方がよいと思います。そうすれば、モデルが簡単になり、頭の中でもシミュレーションできます。仮説検証のモデルがコンパクトならば、現場で臨機応変に方針転換することもできます。仮説検証サイクルが高速になるのです。

遠い先のことは分からない。近い未来なら予測できる。間違っていたら方向修正できる。だから問題を小さく分割しよう。フィジビリティ・スタディを段階的に実施して、ときにA/Bテストで時間を節約して、仮説検証していこう。いわばイノベーションの技法を身につけて不確実性に対処しよう、と。

正確な未来予測は無理なので、「いかに早く、間違いに気付くか」を追究します。「できるだけ早く、たくさん失敗しろ」というルールです。高速な仮説検証サイクルで、これを実現します。

そうでもしなければ、新規事業はビジネスではなく、ただのバクチです。プロフェッショナルは運任せにしません。確実性は無いとしても、成功確立の高まる方法を採用すべきです。

新規事業は「どうすれば、どうなるか」という因果関係がよく分からないブラック・ボックスの状態から手探りで始まります。ならば仮説検証型で「ボックス」の中身を解明していくしかありません。どういうインプット(行動)によって、どういうアウトプット(結果・反応)が得られるか。ブラック・ボックスの振る舞いをデータとして集めることで、ブラック・ボックスの特性を理解する。新規事業の科学的方法とは、実験科学的アプローチです。あるいは経験主義と言ってもいい。

おわりに

今回は「どこまで東京?」というサイトの考察から始まり、企業がWebビジネスの新規事業へ投資する際の考え方を考察しつつ、「できるだけ成功確率を高めるための方法」について検討してきました。具体的には、ローコストを追究する必要性と、そのための方法・考え方について。

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関連情報

本稿で述べたような「IT投資戦略」「ITガバナンス」を考えて意志決定することがCTO/CIOの第一義的な役割です。CTO/CIOの重要性と役割についての記事をどうぞ。

2011年5月追記:アジャイルUXDの記事を執筆(ポンパレを7週間で開発したプロセス事例)という記事をWEB+DB PRESS Vol.60に寄稿しました。

なお、新規事業企画やIT投資企画のセカンド・オピニオンを提供しています。


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