プロトタイピングに適した受託契約形態

「多段階見積・多段階契約」あるいは「準委任契約」ならプロトタイピングが可能。〔追記:2011年時点ではジョイント・ベンチャー型の契約形態も提案されている〕
新規事業に特化した受託開発案件の契約プロセスについて、ずっと考えてきました。作るべきものは、作ってみないと分からない。企画だけでは分からない(新規事業の不確実性)。だから、事前の完璧な見積や、ウォーターフォール型の開発プロセスは困難だと認めた上で、プロトタイピングという手法を採用しようと、顧客に訴えてきました。

議論を進める前に、理想とする仕事のやりかたを明らかにしておきます。

大前提:
ユーザーにとっては、UIこそが製品そのもの

ゼロベース思考で企画したい:
仕事の方法としての「デザイン」

「デザイン」がソフトウェア開発を変革する (2008年1月18日)

プロトタイピングによるフィジビリ(F/S)とは? ()

そこで、どういう契約形態なら「本格的なゼロベース思考の企画」「人間中心設計プロセスの導入」「プロトタイピング型の設計・開発」が実現できるのか、ずっと考えてきました。

現時点では、「多段階見積・多段階契約」あるいは「準委任契約」ならプロトタイピングが可能だと考えています。

1.多段階見積・多段階契約

請負契約なら、多段階見積・多段階契約にする。プロジェクト全体を一つの契約にせず、フェーズ毎に見積・契約する。

実際に着手する直前まで契約を保留・先延ばしすることで、見積リスクを抑える。直前の見積が最も正確であり、何ヶ月も先のフェーズを正確に見積もるのは困難ですから。

最初は企画フェーズだけの見積を出し、契約する(例:100万円/工期2ヶ月)。その成果物をもとに、プロトタイピングの第1フェーズを開始する時点で契約する(例:200万円/工期1ヶ月)。

各フェーズの見積を、早い時点から出して、段階的に詳細化していく。つまり、仮試算を早めに出して、段階的に見積精度を上げていき、最終的に正式見積とする。

参考:超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条 5 多段階の見積りは双方のリスクを低減する

プロトタイピング第1フェーズと並行して、第2フェーズの見積をする。第1フェーズが終わる頃には、第2フェーズの契約が完了しており、スムーズに継続できる。なお、実務的には1ヶ月単位の契約では煩雑になるため、再見積を前提とした複数月契約などの工夫が必要でしょう。

2.準委任契約

請負契約ではなく準委任契約とする。人月単価と稼働率から、工期・工数に対するフィーを頂く。納品物の仕様を細かく定めない代わりに、仕事の手順、ワークフローや、プロセス毎の成果物を定める。手続き、担当者、工数、工期を定めて、その業務が完了したこと(成果物ではなく)に対して報酬を得る契約形態。これはプロトタイピングと相性がよい。

実際には、請負契約でありながら準委任「的」な契約も可能でしょうから、厳密な区別ではありません。「何を持って成果とするか」「報酬は何の対価であるか」といった点が問題です。

以上のように、受託ビジネスにおいてプロトタイピングを可能にする契約方式について、ずっと模索してきました。さらには、「受託」契約から一歩踏み込んで、「共同事業」「提携」のスキームも模索しています。

プロトタイピング型開発 - ZEROBASE Inc.

〔2011年5月追記:IPA SECによる「日本におけるアジャイル型開発に適したモデル契約書案2種を含む、同開発の現状と課題をまとめた報告書」〕

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