「コミュニティの軸」と「誰でもメディア」

概要:雑誌には「コミュニティの軸」という役割があります。新書は書籍でありながら、雑誌的なフォーマットです。ウェブについて語る書籍は、雑誌的になりやすい傾向があります。よって、ウェブについて語る新書は(雑誌の役割である)「コミュニティの軸」という役割を果たしやすい。「コミュニティの軸」の担い手は、雑誌においては編集部という組織でしたが、書籍(新書)においては著者・編集者という個人になります。
前置き

「コミュニティの軸」という雑誌の役割と、「雑誌的」な新書というフォーマット

雑誌には「コミュニティの軸」という役割があります。同じ関心を持つ人が編集者であり、読者であり、その読者の中から次の書き手が育てられ、という「コミュニティの軸」としての雑誌。(*1)

新書は雑誌的なスタイルで発行されていると言われます。(*2) 言うまでもなく新書は書籍です。それが「雑誌的」であるとは、どういうことか。もともと書籍も雑誌も紙媒体であって、紙という物理メディア上のフォーマットの差異でしかありません。ですから、フォーマットの境界を曖昧にすることも可能なのでしょう。(*3)

本題

それをふまえて、書籍がコミュニケーションの媒介(メディア)になっているという指摘です:

そういえば、書籍って、Blogやついったーを得たことでコミュニケーションツールとして蘇ったような気がしなくもない。 @tsuda さんや @totodaisuke さんを見てるとそう思う。


書籍が「コミュニティの軸」になっていることに気付かされました。もともと、「コミュニティの軸」という役割は、雑誌(専門誌)のものでしたが、新書などの「雑誌的」な書籍には、「コミュニティの軸」という役割を果たすことができるのでしょう。

閉じたパッケージ

そもそも、書籍というフォーマットの特徴には、「コンテンツがパッケージとして閉じている」ことが挙げられます。つまり、外部参照なしに成立するということです。(*4)

ただ、ウェブをテーマとした本では、リンク(外部参照)で済ましてしまうことが多いです。これには良い面と悪い面があって、まず良い面については、本が「開いている」ために、読者はその本を見取り図として、参照先のリンクを辿って、さらに詳しく調べることができます。一方の悪い面としては、ウェブ上の情報が永遠に残ることはなく、URLが変わったり、コンテンツが消えたりします。そもそもウェブ上のコンテンツに対する外部参照が多い本というのは、共時性の高い本だと言えます。

※余談ですが、ウェブへの外部参照が多い本なら、ウィキがあるといいかもしれません。リンク切れがあっても、著者・編集者・読者みんなで直していけばいい。さらには、そこで議論してもいいかもしれない。

この点から、「ウェブについて語る本は、傾向として雑誌的になりやすい」と言えるかもしれません。共時的で開いているということは、出版されたときに読まなければ分からないことが多い、文脈依存性が高い、ということです。

さらに、ウェブについて語る新書なら、なおさら雑誌的な役割を果たしうる。つまり、「コミュニティの軸」になりやすい(容易にそうなることができる)と言えるかもしれません。(*5)

「コミュニティの軸」の担い手(組織から個人へ)

従来は編集部という組織が、雑誌という想像上の場を主催し、それが「コミュニティの軸」として機能していました。現在ではウェブの力を借りた著者・編集者という個人が、書籍(とくに新書)において共時性の高い内容をパブリッシュすることで、「コミュニティの軸」になることができる、のかもしれません。

つまり、「コミュニティの軸」という機能の担い手は、雑誌においては編集部という組織でしたが、書籍(新書)においては著者・編集者という個人にも可能であると。

このテーマについては、「誰でもメディア」を論じた『新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に』が必読です。「誰でもメディア」時代の主役は「個人」なのだと。そこで「組織」が生き残るにはどうすればいいか、という本です。

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*1 すべての雑誌について言えることではなく、一部の専門誌についての話です
*2 もちろん、すべての新書がそうではないと思います。中公新書や岩波新書には、書籍として読み応えのあるものも多いです
*3 雑誌の書籍化として、昔からムックというスタイルも
*4 もちろん、程度問題です。研究者の博士論文を書籍化したものなど、大量の参考文献への外部参照があって、単体では理解しづらいものもあります。
*5 ここでいう「なりやすい」とは傾向のことではなく、「なることができる」という機能性・可能性(ability)の意味です。

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