近未来EC研究会 第1回 討論(3) 試着のEC化 (#fecs)

新しい消費(購買)体験の可能性についての議論。店頭における服飾品の「試着」体験をウェブと接続するDIESEL CAM事例の検討。

(※本記事は近未来EC研究会 第1回「オンライン・ショッピング」のレポートです)

店舗とネットの関わり」についての議論をうけて、新しい消費(購買)体験の可能性についての議論になりました。まずは店頭における服飾品の「試着」体験をウェブと接続できないかという検討です。

試着のEC化

「店舗で洋服を試着して購入する」というケースについて検討しました。一人で来店するパターンでは、試着・検討・判断まで一人で完結する人もいれば、販売員の意見を聞いて判断する人もいます。また、友人・恋人・家族と共に来店し、試着して意見をもらって判断するという人もいます。あるいは、事実上、判断するのが本人ではないパターンも(例:妻が夫のファッションを決定している夫婦)。

キーワードは「ソーシャル(社会的、社交的)」です。洋服を購入するのは、しばしばソーシャルな行動です。そこで、すでにあるソーシャルな行為を、ウェブによってより促進したり、障害を取り除いたりできないか、と考えました。

そこで、DIESELZARAがFacebook上で実験した事例が紹介されました(※出典不明)。ZARAの店舗で試着した際に、自分の姿を写真撮影し、Facebookに送ってフレンドのフィードバックをもらう仕組みを提供した実証実験とのことです。もし「店頭販売において一人客は試着後の購入率が低い」という事実があったとすると、これにより一人客の試着後購入率が高まる可能性があります(おそらく、そういう仮説での実証実験ではないかと)。

※出典不明:会議ではZARAという発言でしたが、正しくはDIESELの事例でした:店舗で試着した写真をすぐにFacebookで共有する試み by ディーゼル | リアルタイムウェブ.jp

これを消費者の側から考えてみます。試着した後にも悩んでいるときは、どちらかというと買わないことが多い、という人もいるのではないでしょうか。「買う」という決断は、取り返しがつきませんが、「買わない」という決断は「保留」でもあります。意思決定にはYES(肯定)、NO(否定)、NOT NOW(保留)の3通りがあり、「買わない」はNOとNOT NOWの両方を含んでいるといえます。

ただし、よほど気になる商品でなければ、「保留」して帰宅したのち、その商品が気になっていたことを忘れてしまうかもしれません。NOT NOWのつもりが、FORGOT(忘却)になってしまう。あるいは、覚えていたとしても、試着した印象が徐々にあせていき、また店に行くのも面倒だし、「もういいや」となってしまうかもしれません。もし、その商品が自分に似合っていたとしたら、その人にとっては損失です。つまり自分に似合う商品を手に入れる機会の損失です。

もちろん、フレンドの(ネガティブと本人が受け止めるような)フィードバックによって、買わなくなる場合もあるでしょう。それも含めて、総合的には、おそらくこのような仕組みを適切にデザインできれば、店舗の売り上げ増と、消費者・来店者のよりよい体験の両方を実現できる可能性があると思います。

ここにイノベーションの種があるかもしれません。上述のような「理想的でない状況」に解決できるかもしれない問題を発見し、素晴らしい解決策を提案できる可能性が。

なお、次のような未解決の問題があります。試着の印象についてウェブを通じてフレンドからフィードバックを得たいという期待は、時間の制約を受けます。フィードバックは5分、15分といったスパンで欲しいのではないでしょうか。そのような時間でフレンドのフィードバックを得られる可能性は(もちろん人それぞれですが)そこまで高くない、という人が多いかもしれません。フィードバックを得られる期待が低ければ、そのような行動はなされないわけですから、どのようにリアルタイム性を確保(あるいは「緩い保証」)するか、が未解決問題です。

〔2011年5月追記:Facebookがリアルタイムなアーキテクチャに移行し、日本でも普及してきました〕

なお、ここでいう「イノベーション」は、必ずしも新しい商品・サービスを意味しません。消費者にとってより良い体験は、既存の道具をうまく使うこと(工夫)によって実現される場合もあります。上述の例では、Facebook、Twitter、mixiなどの既存ソーシャルウェブサービスを上手く使う「イノベーティブな作法」が発見できるかもしれません。その場合、イノベーションの担い手は、ウェブサービス提供企業ではなく、消費者と小売店ということになるでしょう。

以上、「試着のEC化」でした。

発想のヒント:INTERACTIVE MIRROR

「イノベーティブな作法」の例:YouTube - SOUR '日々の音色 (Hibi no neiro)'

補足:店頭で手に取ったり、試着した商品が、自動的にデータベース化され、後日ウェブ上から購入できる(通販)という形で再来店不要にするデザインの可能性についても検討しました。

余談:商業におけるデザイン(人間中心デザイン/ユーザー体験デザイン)の役割について考える事があります。「経済活動の摩擦・損失を減らすこと」によって貢献できるのではないかと。通常、自由な(強制されない)取引は、売り手と買い手の双方の利益になります(もちろん、粗悪品を売りつけられたり、買ったら後悔せざるを得ないような商品を、一時的な気の迷い(の誘導など)で買ってしまうのは「双方の利益」ではありません)。しかし、「起こり得るべき取引」が起こらない事態があります。それを売り手の言葉では「機会損失」と呼びますが、買い手にとってもまた「機会の損失」であると考えます。そのような「機会損失」を減らすことが、デザインにはできると思います。余談でした。

※注:これは発言録ではなく、参加者の総意・合意事項でもなく、私(石橋)の観点で議論を整理した報告書という位置付けです。

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