プロジェクト成果の貨幣的価値評価法としての社内取引制度(XP祭り2010〜アジャイル学園祭〜)

XP祭り2010〜アジャイル学園祭〜で5分間の発表(ライトニング・トーク)をした際のスライド、発表内容および解説。

先日、XP祭り2010〜アジャイル学園祭〜というイベントで5分間だけ時間を頂いて発表しました。そのときのスライド、発表内容および解説です。この発表の目的は「このような新しい仕組みに興味を持って頂くこと」「理解者を増やすこと」でした。興味があればコンタクトしてください。実際どのような仕組みか、どのように運用しているか、といった話も機会があればしたいので、オファーをお待ちしています。

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スライド資料

動画

発言の訂正:「ソフトウェアについて愛情みたいな〈価値〉を感じる人はあまりいないと思うので、〈貨幣的価値〉と」 という発言(1:35)は言い間違えました。ソフトウェアに愛情を持つエンジニアがいるのを承知した上で、 お詫びして訂正します。本来の発言意図はこうです。 「『いくら金を積まれても売らない』といった愛着は、 少なくともこの文脈(仕事としてのソフトウェア開発業務) においては、あまり関係ないと思うので、〈貨幣的価値〉と」という意図です。(なお、想像し得る稀な例外としては、例えばM&Aなど事業譲渡の局面において、自分が作ったソフトウェアへの「愛着」を理由に買収提案を拒む人など)

草稿

スライドに先立って作成した草稿です。これを5分で喋れる内容に絞ってスライドを作り、発表しました:

  • 今回のテーマ
    • ソフトウェア開発の成果を評価する方法
  • なぜ成果を評価するのか?
    • アジャイルソフトウェア開発は焦点を移動する。
      • 「ソフトウェアの成果物(output)」から
      • 「ビジネスの成果(outcome)」へ
    • ゆえにビジネスの成果に基づく評価方法が必要。
      • 従来のソフトウェアメトリクスではなく: LOC, FP, COCOMO, WBS
  • 成果の評価とは?
    • 評価する(evaluate)
    • 成果の価値(value)を定めること
  • 価値とは
    • 価値は主観的である。
    • 価値は取引を前提している。
      • 買い手にとっての価値 buyer's value
        • それに対して支払っても良い対価(cost)の上限
      • 売り手にとっての価値 seller's value
        • それを手放しても良い価格(price)の下限
  • プロジェクトの価値を決定する方法
    • 取引=交渉
      • 価値は主観的で、取引を前提しているから。
      • 客観的ではない。
      • 交渉スキル次第。
      • 身もふたもないが、これが私の結論。
  • 取引の構造
    • 〈顧客〉ー〈営業部門〉ー〈開発部門〉
    • 二つの取引
      • 〈顧客〉買い手ー売り手〈営業部門〉
      • 〈営業部門〉買い手ー売り手〈開発部門〉
    • 全体の取引の流れ
      • 見積依頼:〈顧客〉 → 〈営業部門〉
      • 見積依頼:〈営業部門〉 → 〈開発部門〉
      • 見積書:〈営業部門〉 ← 〈開発部門〉
      • 見積書:〈顧客〉 ← 〈営業部門〉
      • 発注書:〈顧客〉 → 〈営業部門〉
      • 発注書:〈営業部門〉 → 〈開発部門〉
      • 略:発注請書、納品書、検品通知書、請求書、領収書
  • 取引成立条件
    • 合意可能領域 ZOPA (Zone of Possible Agreement)
    • 買い手にとっての価値より安い価格 buyer's value < cost
    • 売り手にとっての価値より高い価格 seller's value > price
    • この両者を満たす価格帯で交渉(取引)が成立します
  • 双方が取引から得る利益
    • 買い手の利益:消費者余剰 buyer's value - agreed price
      • 「支払ってもいい額」と「実際に支払う額」の差
    • 売り手の利益:生産者余剰 agreed price - seller's value
      • 「売ってもいい額」と「実際に売る額」の差
  • 交渉の戦略
    • 最善の代替案 BATNA (Best Altenative To a Negotiated Agreement)
    • ZOPA内で取引が成立しない → 代替案(alternative)
    • 買い手のBATNA
      • 買わないという選択肢 → ほかの売り手から買う
    • 売り手のBATNA
      • 売らないという選択肢 → ほかの買い手に売る
  • 「断る力」
    • XP2010LT 断る力.jpgBATNAがあれば"Win-Win or No-Deal"
    • 断れる条件
      • 取引が強制されていない(制度的条件)
      • 別の取引相手を探す能力がある
        • 社内外に複数の取引相手を持つことが交渉力になる。
        • 交渉スキルが低くても交渉力を持てる。
  • 制度導入の帰結
  • 「社内経済」全体
    • 個々の取引で双方が利益を得る
    • すべての取引で全員が利益を得る
    • 経済学で言う「市場機構による最適な資源配分」
    • 各自が利己的に行動した結果、全体の利益になる
  • インセンティブ
    • 人々はインセンティブに反応する(マンキュー)
    • 取引を真剣にするインセンティブ(制度的条件)
    • 「たくさん稼ぐ」→個々人が主観的な「報酬」を得る
      • 例:給与査定、賞与、抽選券など
  • 注意すべき前提条件
    • 商法にあたるもの
  • 双方が取引から利益を得る条件
    • 公平な取引のルール(制度的条件)
    • 強制された取引では、一方が不利益を被る場合がある。
  • 導入
    • 制度設計:制度的条件を整える
      • インセンティブ
      • 取引ルール
      • 取引の自由(強制がないこと)
    • 教育
  • ここから余談
  • 経済思想
    • 自由主義:自由な取引、自由な市場、価格
    • 共産主義:取引相手は政府のみ、市場はない、価格もない
  • 信用取引とリスク
    • 見積:業務請負取引において売り手が価格を決めるタイミング
    • リスク(情報不足):買い手は成果物を見ずに価値を判断する
    • 売り手が努力したほうがいい:リスクに関する情報提供、説得
  • 注:価値は取引を前提している
    • 取引しないものには価値がない?
    • priceless かけがえのない(価格がつけられない)
    • 売り手:お金で手放せない
    • 買い手:お金で買えない
    • 買えるものはマスターカードで

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