芦田宏直氏のデザイン意味論と深澤直人氏

芦田宏直氏がデザインの哲学的意味論に関して講義した動画。私のメモとあわせて。深澤直人氏のインタビュー記事も紹介。

芦田宏直氏の講義:
デザインとは何か ― デザインの哲学的意味論について

メモ:

  • 志向性、気分について。エレベーターを降りる際、扉が開いたら目の前に人がいて、驚いたりする。なぜ驚くかというと、人がいないと予期しているから。この予期行動は、ハイデガーによれば「気分」。
  • テーマ主義は自分を見限っている。自分の可能性を狭めている。テーマ主義とは例えばセグメンテーション。無関係なものが関連付けられたときに「予期せぬ成功」が生まれるが、これはテーマ主義ではない。テーマを破壊している。デザイナーはテーマではなく「気分」を対象とすべし。
    ※テーマ主義について:「twitter微分論からtwitter身体論へ」講演
  • 「この作品の良さは、私にしか分からない」というような「良さ」を、誰もが感じられるようなとき、その作品は大成功する。ハイデガーの論じた「単独性」。死は誰にでも訪れる普遍性をもつが、それと同時に一人一人が個人的に引き受けなければならないものでもある。
  • 過去(既在)はこれからやってくる。過去の延長に未来があるという考え方ではいけない。そういう意味での「過去」は断ち切らないといけない。過去についての実在主義をやめること。
  • まだやってきていない将来・可能性を、過去の中から掘り起こしていくようなデザイン手法。「新しさ」は「すでにあるもの」として認知されるときに一番大きなパワーを持つ

この講義とメモをふまえて:
深澤直人、デザインを語る。|エキサイトイズム

たとえば天井から下がった照明器具のケーブルがちょっと太いとかいう、みんなが生活の中で潜在的に気にかかっているエラーを見つけ出し、今までに変わらなかったスタンダードを頑張って修正するのです。最初は「なんだ、全然変わっていない」とか言われるかもしれませんが、比べてみると「ああ、良くなっている!」という感じがわかってくる。そうすると、もう元の太いケーブルには絶対戻れないのです。その微妙な違いは「あまり変わらないから前のままでいい」とはならないのです。全員が共有している潜在的な引っかかり、自分さえあまり気付いてなかった思いをすくいあげるということが、より良いデザインを成すのだと思います。

変なたとえですが、人の顔も「あの人は美人、あるいは美男子だな」と思いつつ、「もう少しここがこうだったら、完璧なのに」というように、みんな同じ小さな破綻部位に気付く(笑)。それはもう完璧が見えているということなのです。9割完成していてどこかが破綻していると、人の意識はそこに集中するのです。ですから、たくさんの人がどうでもいいと思うくらいの小さな破綻が、実は大きいのです。世界を変えるのは、ちょっと変えればいい。それが劇的に変わるのです。だから、それを探し出す。

名著:The Semantic Turn: A New Foundation for Design

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