ウェブサイトを自前で構築しなくてもコンテンツ発信できる時代に「ウェブ制作会社」の役割はどう変わるか

概要:

「ありもの」のプラットフォーム(とくにソーシャルメディア)を活用してコンテンツの発信やコミュニケーションを行えるようになってきました。ウェブサイト構築の必要性が減る中で、「ウェブ制作」の主題は「ウェブサイト」から「コンテンツ」へ移るでしょう。

キーワード:

ウェブサイト構築, コンテンツ制作, アーキテクチャ, コンテンツ

Webサイト制作の終わりと始まりという記事で長谷川さんは次のように書きました:

Webサイトは必ずいるよね、という前提に囚われず、利用者が最も必要としているコンテンツを配信する手段を選ぶ時代になりました。そのときに Web プロフェッショナルとして提供できる価値は、Web を熟知していること、コンテンツと利用者を繋げることができるスキルだと思います。

同意です。そのときウェブサイト構築への投資が減り、コンテンツ制作とコミュニケーション活動への投資が増えるでしょう。

「ありもの」活用で小さく早く

自前のウェブサイトで何か新しい情報発信をしようとすると「CMS開発投資」などのお金と時間がかかったりします。「新しいことを始めたい」と思い立ってから実際に発信(publish)するまでには、だいたい3ヶ月から半年くらいの時間を要するのが普通だと思います。これを「遅い」と感じる人は増えていくでしょう。

ですから「自前」ではなく「ありもの」のプラットフォームが選択肢に登ってくることになります。例えばFacebook、Twitter、YouTube、Ustream、Flickrなど。これらはソーシャル・メディアですから、良質なコンテンツを「発信」すればソーシャル・ネットワーク(人間関係)を通じて「伝搬」しやすいですし、そこで接点をもった人々との(双方向の)「コミュニケーション」もできます。

新たに期待されるノウハウ

「ありもの」のプラットフォームの活用を前提としたコンテンツの発信とコミュニケーションが主題になってくれば、ウェブ制作会社や広告代理店にはそのためのノウハウ(企画・制作・編集・公開・更新・運用など)が求められます。

まだそういうノウハウを持っている会社は少ないのではないでしょうか。私自身は、この変化に適応するための備えが必要だと考えています。ノウハウ獲得、学習のための投資です。

獲得すべきノウハウは二つあります。

一つ目は「ありもの」のプラットフォームを知って、使いこなすノウハウです。適材適所の選定力。

二つ目は「何か新しいことをしたい」ときに「小さく素早く始める」ための手法です。例えば「仮説検証の論理を組み立てて、細かくフェーズを切って、スモール・クイック・スタートを実現する」といったような。「リーン」や「アジャイル」の考え方に通じます。

予算配分の変化

「ありもの」のプラットフォームを活用するということは、ウェブサイト構築予算が減るかもしれません。

広告枠の購入量も減るかもしれません。良質なコンテンツをソーシャル・メディアを通じて届けることで、人間関係(ソーシャルネットワーク)における情報の伝搬と共感の連鎖が起こる。そのほうが(狭義の)「広告」よりも「いいお客さん」と「いい関係」を築くことができる。このような考え方の企業が出てきました。おそらく増えていくでしょう。そういった企業では従来の広告予算からの「振り替え」もあるはずです。

〔※この節では「ほかの条件が一定だと仮定した場合」の傾向性を考えました。実際の予算額や予算比率を考えるうえでは、これ以外に様々な要因を考慮しなければなりません〕

ノウハウの獲得

IT業界には「ドッグフードを食べる (Eating your own dog food)」という言葉があります。「自分が作ったドッグフードを食べずに、良いドッグフードは作れない」といった意味合いの言葉でしょうけれど、同じ事が「ソーシャルメディア活用」についても言えるはずです。

ソーシャルメディア活用のノウハウを獲得するためには、まず自身がソーシャルメディアを活用することが大事なのではないでしょうか。自分を実験台に研究して、その結果として得られたノウハウを顧客に提供するような姿勢がよいと思います。

コンテンツ優先時代のアーキテクト

「ありもの」のプラットフォームを活用するといっても、使いこなす過程では「アーキテクチャ」の重要性が見直されることになるでしょう。「ありもの」の組合せには限界があるはずです。

そのときアーキテクトにはどんな構想力が必要でしょうか。「ありもの」を最大限活用しつつも、その限界を超えていくための構想力ですね。コンテンツ発信とコミュニケーションの実務経験に裏打ちされた、アーキテクチャの構想力です。

アーキテクチャ(設計様式)の進化も予想します。いろんな「ありもの」のプラットフォームにパブリッシュしたコンテンツをマッシュアップして「自社サイト」「プロフィールサイト」を作る。こういうマッシュアップ型アーキテクチャが進化すると思います。その原始的な形態は about.me ですが、これがもっと高度に進化して企業活動にも使われるようになるはずです。

そうなると、大企業の大きなウェブサイトを構築・運用する人たちも影響を受けるでしょう。詳しくは説明しませんが、ウェブ産業の「生態系」(エコ・システム)のなかでは影響を受けずにはいられないはずですから。

複数のプラットフォーム

結論

「ありもの」のプラットフォームを活用することで「ウェブサイトを作る仕事」は減るかもしれません。しかし、コンテンツを作る仕事は減らないか、むしろ増えるでしょう。コンテンツ制作機能(企画・取材・編集など)を持たない企業も多いのですから、ウェブ制作会社が請け負うべき業務はあります。狭義の制作代行から、コンテンツ活用戦略のコンサルティング、コンテンツ活用アーキテクチャの設計といったレベルまで。

あなたへの質問

この文章では(コンテンツの)「質」という言葉を使いました。この文脈での「質」は「良し悪し」と言い換えることもできます。具体的に「良質」「良い」とはどういう意味でしょうか? あなたの考えを教えてください。ご意見を頂いて、次の文章に活かしたいと思います。

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著者

ウェブ・アーキテクト石橋秀仁

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