起業家が他人資本で何度も挑戦するために

「第2回ニコニコ学会βを開催してみた」というイベントで知り合った星暁雄さんが、弱者としての起業家を知ってくださいというぼくの文章を参照しながら起業家は「傷」をどう乗り越えるのかという文章を書いてくださいました。それに触発されて、ぼくも書いてみます。

「第2回ニコニコ学会βを開催してみた」というイベントで知り合った星暁雄さんが、弱者としての起業家を知ってくださいというぼくの文章を参照しながら起業家は「傷」をどう乗り越えるのかという文章を書いてくださいました。それに触発されて、ぼくも書いてみます。

「失敗」と「再挑戦」について考えてみます。起業家の「失敗」の経験には価値があるはずです。「失敗」した起業家の再挑戦を応援したい人がいます。まだまだ足りないとは思いますが。

失敗しても再チャレンジする起業家には絶対投資したい

(アレン・マイナー氏:)飯塚さん(引用注:バイデザイン社創業者)ね。彼は本当のシリアルアントレプレナー(何度でも起業する人)だからね。私は一回失敗しても二回目にチャレンジするような人には絶対投資したいと思うんですよ。ビジネスモデルがどうこういうよりも、ああいう経営者を応援するために会社を作ろうと思ったんです。もちろん会社として、他の経営メンバーがイエスと言ってくれなければ何もできないわけだけど、バイデザインの場合は合意がとれて投資をすることになりました。

何が「失敗」なのか、という問いはきわめて重要なのですが、とりあえず「起業したが事業をたたむことになった」ことだと定義しておきましょう。あくまでも狭い意味での「事業の失敗」について言及します。

さて、「失敗」と「再挑戦」については、二つの観点から論じることができます。

  • どのような起業家なら「失敗」しても再挑戦しやすいか。(個人的条件)
  • 起業家の再挑戦を可能にする環境的・制度的な条件とは何か。

まずは個人的条件から見ていきましょう。

「あいつは何かしてくれるに違いない」という期待が、失敗しても再挑戦する機会につながります。起業に失敗して会社をつぶしても、「期待資本」がある人のもとには再び金が集まります。

この「期待資本」が個人に宿るとき、大きな挑戦ができる(しやすい)わけですね。ほかには金融資本(実家が金持ち)でも社会関係資本(仲間がたくさん)でもいいのですが、「資本」は大事です。資本とは「元手」のことです。

次に環境的・制度的な観点に移ります。

この「期待資本」が、起業家の挑戦と失敗と再挑戦を語る上で、非常に重要な要素だと思っています。とくにエンジェルやVCなどの「他人の金」「他人資本」で勝負する人、勝負できる人を、どう増やすかという観点で。

シリアルアントレプレナー(連続起業家)がいます。要するに「何度も起業する人」「起業し続ける人」のことです。日本ではまだシリアルアントレプレナーの活躍が目立たない。日本の起業家が「成功」する場合、たいてい上場後もトップ(代表取締役)を続けるから、「次の挑戦」に行かない/行けないのです。

前の起業が成功だったか失敗だったかに関わらず、何度も挑戦するのが「シリアルアントレプレナー」です。そういう人が増えると、新たな後輩起業家も増えるでしょう。「創業初期のベンチャー企業で働いた後、自分でも起業する」という起業家は少なくないし、そういう人の方が成功確率が高いように見えます。(※これは実践的直感に過ぎないので、実証研究の成果を待ちたいところです)

最後に「まとめ」「提言」らしいことを言って締めくくることにしましょう:

  • 他人資本での起業するほうが(たとえ失敗しても)再挑戦しやすい。
  • 期待資本か社会関係資本が十分なひとほど他人資本で起業しやすい。
  • 期待資本か社会関係資本を蓄えたうえで、他人資本を調達することが個人的生存戦略として有力である。起業のリスクをとりすぎないために。

この「提言」は起業家個人の戦略です。弱者としての起業家を知ってくださいでは制度への提言として「失敗しても死なないためのセイフティネットが必要だ」と書きました。そこでは自己資本を投入したうえでの失敗が前提になっています。他人資本での失敗では自己資本(家計)への致命傷にならないので、事情が違ってくるわけです。

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他人資本での起業について考えるうえで、このコラムはオススメです。あ、ちょっと古いので、現代の事情、例えばY-Combinatorに象徴される起業のチープ化や制度化などに合わない部分もあると思いますが。 →起業家というキャリア(西川潔)

起業と社会制度について考えた文章です。 →国家権力による価値観の規範化・内面化について(ベンチャー起業促進という大義名分における)

「失敗」を価値ある経験として本人の暗黙知として固定化しつつ、その語りうる部分(形式知)を記述するための作業としてのデブリーフィング・ワークショップができたらいいのになあ、と思います。 →Debriefing - Wikipedia, the free encyclopedia

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