監視カメラとか人間関係とか「ゆとり世代的主体」とかについて考えた不勉強会#8のメモとスケッチ

公園でモヒートを飲みつつ語り合いました。単一的アイデンティティ、複数的アイデンティティ、脱中心的複数的アイデンティティ、ツリー型の複数的アイデンティティ、セミラティス型の複数的アイデンティティなどについて。

公園でモヒートを飲みつつ語り合いました。単一的アイデンティティ、複数的アイデンティティ、脱中心的複数的アイデンティティ、ツリー型の複数的アイデンティティ、セミラティス型の複数的アイデンティティなどについて。

概要

服毒本

  • オーウェル『1984年』
  • 平野啓一郎『ドーン』
  • 川原礫『アクセル・ワールド』

自己紹介と服毒本の感想

  • I氏:導き手→『幼年期の終わり』
  • T氏:分人主義、多重生活
  • O氏:司馬遼太郎
  • Y氏:アクセルワールド、アバター、分人、分裂、プライバシー、絶縁しない分人生活
  • M氏:若い子は主人格なき分人主義、自分もソーシャルメディアは分人主義、社会的抹殺リスク、犯罪

服毒本の解説

  • 『一九八四年』では監視社会が単純な巨悪として描かれる。ただし、反乱は挫折し、監視社会の秩序は壊れない。
  • 『ドーン』では監視社会への是非と共に、監視社会を生きる主体の在り方が問われる。個人主義と分人主義。
  • 『アクセル・ワールド』においては監視カメラが分人の自己実現を支える(≒希望を与える)インフラになっている。

メモ

  • いろいろ考えるとアイデンティティの使い分けは難しい。最終的にはノーガードしかない?
  • メディアリテラシー
  • プロフェッショナリズムと公共性
  • マニエリスム、勉強会マニア、仕事の意義からの疎外
  • アーキテクト教育
  • 別名、別顔。『ドーン』の世界では、名前と顔を捨てて別人になるための整形手術が発達している。
  • 群体としての人間、分人の共有。ツイッターで言うと「中の人は複数」という在り方。
  • 進化、目的論、予定説
  • まどまぎ・ピングドラムの自己犠牲と世界システム改変、輪廻のラグランジェ
  • マーケティングリサーチ、インサイトコミュニティ
  • 二割八割の法則
  • ディオニュソス、アポロン
  • ブレスト、ワイガヤ、カオスの淵
  • プロフェッショナル、マネジメント、スペシャリスト
  • 大きな物語、象徴界、超越論的シニシフィアンといった超越的な価値の不在→プロフェッショナリズム、自律的成長、勤勉の美徳の無根拠状態

スケッチ

ソーシャル・ネットワーク、ペルソナ、アイデンティティについて考えるためのスケッチ。

※注意:「ソーシャル・ネットワーク」は社会的関係性を指す。「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」のようなウェブサービスを指す言葉ではない。ウェブとは無縁な人にも「ソーシャル・ネットワーク」はある。

図1 単一的アイデンティティ

  • 様々な社会的文脈(ソーシャル・コンテキスト)に属す一つの主体。
  • ポール・アダムスの『ウェブはグループで進化する』は図1のような感じ。
  • いわば「Facebook的アイデンティティ」。

図2 異なるペルソナ(仮面)を使い分ける複数的アイデンティティ

  • 中心に確固たる「ほんとうの自分」が存在するような主体。
  • ペルソナはあくまで「仮面」(=役割演技=ロール・プレイイング)にすぎず、誰にも見せない「ほんとうの自分」がある。
  • 「個別の社会的文脈で、そこで被っている仮面について考えたり、人に相談したりすること」と、「自分が被っているすべての仮面の全体構成について、つまり〈ほんとうの自分〉の生き方について考えたり、人に相談したりすること」は異なる。
  • 後者では、個別ペルソナ内の視点ではなく、メタレベルの視点になっている。

図3 脱中心的複数的アイデンティティ

  • 複数のアイデンティティがあるという点で図2と似ているが、中心に「ほんとうの自分」がいない。
  • ゆとり世代以下に、こういう若者が増えている印象。
  • 極めて機会主義的に、その場の社会的文脈で求められた振る舞いを適切にできる。
  • 「演技」と「本心」の葛藤で悩んだりしない。

図4 ツリー型の複数的アイデンティティ

  • 「ほんとうの自分」を漏れなくダブりなく(=MECEに)分割して使い分けるような複数的アイデンティティの在り方。
  • 個々のアイデンティティがお互いに重複せず、絶縁(アイソレーション)されている。
  • プライバシーを保ちやすい。ここでいう「プライバシー」とは「自己情報コントロール権」(もっと言えば「自己イメージコントロール権」)の意味。

※上図は『非技術者のためのデジタル・アイデンティティ入門 : .Nat Zone』より引用

図5 セミラティス型の複数的アイデンティティ

  • 3つの社会的文脈(=3つのペルソナ)に属している。それを3本の切断線で表現している。
  • MECEな切断ではないので、重複する領域が出てくる。例えば赤く塗った領域。
  • そこは2つの社会的文脈(IとII)の両方で開示している自分の側面。
  • プライバシー・リスクは高まるが、うまくすれば2つの社会的文脈の相乗効果が得られる。 → ソーシャルメディアで仕事と私生活の情報を混在させるような使い方・生き方。

図6 ソーシャル・ネットワークの相対的理解

  • 自分を中心にソーシャル・ネットワークを描く(=モデリングする)と見落とされがちだが、自分もまた「誰かにとっての誰か」である。
  • それを図示すると、自分と繋がっている人も、自分と同様に複数人と関係を持っている。
  • 自分を中心に描いたソーシャル・ネットワークのモデル(図)は、あくまで「自分と関係している他者それぞれの持つネットワークの線を切り取って、自分を中心に取り出したグラフ構造」だということ。
  • これを忘れると「ソーシャル・ネットワーク天動説」になってしまう。言い換えると「自己チュー」。

関連情報

ニュースピークは思考を制約する。 p.82
内心の自由。 p.256
寡頭制集産主義の理論と実践 p.284
 上層、中層、下層の安定構造
「真実」から疎外されることへの不安が高まる社会で、それでも可能なコミュニケーションのあり方とは何か。他者の部分〔=分人〕とコミュニケーションし続けること。そのとき「全体」〔=個人〕を措定する必要はない。「自分の知らない顔〔=真実〕」があると怯える者は「全体的コミュニケーションの不可能性という絶望」を感じる。だが、全体性への渇望に決別できる者には「部分的コミュニケーションの可能性という希望」が与えられる。それが分人主義 dividualism の真髄だろう。

分人 dividual
散影 divisual
無領土国家
元はニコ生で海猫沢めろん氏が「いまアクセル・ワールドがいちばん面白い」と言っていて、まずはアニメを見てみたら面白かったので、原作も読んでみた。最新の第11巻まで読んだ。「監視カメラ」が「ディストピア」の記号ではなく成長の場を可能にするインフラ、言い換えれば希望の装置として描かれているのがユニーク。
3分で読了。ぼくも「ソーシャルネットワーク構造モデル」と同じ図を昔に描いたけど、もう古い。いまのぼくは分人主義的な図を描く。この著者は分人主義ではない。

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