完全成果主義(ROWE)で新卒採用は可能か?

完全結果志向の職場環境(ROWE)は新人が仕事を覚えて給料分を稼げるようになるまでに作った「赤字」の累積を可視化します。この制度で新卒採用することは、けっこう怖いことです。

ゼロベースは「自立したプロフェッショナルのための自由な企業の制度」を実現しています。これは完全結果志向の職場環境(ROWE) の一種です。ROWEと新卒採用の両立は難題です。とはいえ可能ではありますが。

ゼロベースは新卒一括採用どころか新卒採用そのものを行っていません。人的資本への投資を回収する前に辞められてしまうと、経営上深刻な痛手になります。ゼロベースのような小さな会社には取れないリスクです。

ROWEは新人の「負債」を露骨に可視化する

どこの会社でも最初の数ヶ月間は新人が給料分を稼げないものです。その「赤字」を、ROWEは露骨に可視化します。

すべてのROWEがそうであるとは限りませんが、ゼロベースの制度ではそうなります。ゼロベースの制度においては

  • 固定給は報酬ではない
  • 固定給は、その時点では貸し付け(従業員の借金)である
  • 個人採算上の営業利益が、真の報酬である

という点が重要です。

それが新人にとってショックやストレスになって離職するのではないか。そういう懸念が新卒採用を躊躇させます。

新人は会社に200万円の「負債」を負う

単純化したモデルで試算してみましょう。詳しくは「シミュレーション解説」をご参照ください。

月給20万円で、赤字が毎月33万円から始まり、毎月3万円ずつ赤字幅が減るとしましょう。11ヶ月目に単月黒字を達成します。その時点で累積損失額はピークの198万円になります。自分の給料分を稼げるようになるまでの間に、会社に198万円の「借金」を作ったことになります。

それ以降は「借金」を返済していき、いずれは逆に会社に対する「貸し付け」ができるようになります。これは、会社から見れば未払賞与・賞与引当金といった「負債」の形で資金調達している状態です。

「負債」の可視化は「冷酷」か?

新人はこのような「負債」を会社に対して積み増しながら、仕事を覚えていきます。その「負債」を、自分が仕事を通じて生み出す付加価値によって「返済」していくわけです。

ひょっとしたら、冷酷な仕組みのように聞こえるかもしれません。しかし、この仕組みが素晴らしいと思うから、ゼロベースでは採用しているわけです。

この制度には曖昧さがありません。誰に対してもフェアです。ROWEは公正で素晴らしい制度です。

ROWEという制度についてこられる新人なら、このように考えるはずです:

「自分が会社に対して負っている負債の額が具体的な数字で可視化されるなんて、とても公正な制度だ」

「曖昧な心理的負債を貸されてサービス残業を強いられるような職場より、ずっと気持ちよく働ける」

もちろん、ROWEが「冷酷だ」と感じる人もいるでしょう。しかし、考えてみてください。可視化されようと、されまいと、新人が「赤字社員」の間は「負債」が詰み上がっていくという事実について。

そこを家族的温情主義で曖昧に、なあなあに、乗り切るほうがお好みなら、典型的日本企業は肌に合っているのでしょうね。それはそれでよいのではないでしょうか。「いい職場」とは「肌に合う職場」のことです。

(ぼくは他人に自分の価値観を押し付けません。直接に関わりあいがないのに価値観で争うなんて下らないことです。お互い別々の道を行きましょう)

レモネードを売ったことはありますか?

採用者視点では、新卒者の問題は、働いた経験がないということです。学生のうちから稼いだ経験があるかどうか。その経験がある人なら、ROWE制度に適応できる可能性が高くなります。

一般的なアルバイト経験は、ここでいう「働いた経験」に入りません。個人事業主的に、自分で自分の仕事の値段を決めて販売し、受注し、納品し、請求し、回収した経験のことです。

個人事業主的な感覚の学生に出会うことは、ほとんどありません。言い換えると「就職活動は自分の労働という商品を売り込むセールス活動だ」と考えている学生です。

こういう学生はそもそも採用市場でも人気でしょうから、うちのような小さな会社に目を向ける前に大企業の内定を得ているのかもしれません。

余談ですが、アメリカの小学生はレモネードを売ることを通じて商取引のリテラシーを獲得するようですね。早い時点でそういう経験をすれば、大学を出る頃には大違いでしょうね。

「ROWEじゃない働き方なんて、ありえない!」

とはいえ、いったんROWEに適応したワーカーは、ほとんど転職を考えることがなくなるでしょう。いい意味での「ROWE中毒」になってしまうかもしれません。

「ROWEじゃない働き方なんて、ありえない!」というワーカーにとって、転職の選択肢はきわめて少ないわけです。ROWEを導入している企業がほとんどない現状では。

言い換えると、ROWEは採用市場におけるユニークな強みです。それは採用における強みである以上に、ES(従業員満足)における強みだと言えそうです。

おわりに

ROWEと新卒採用について、実際に取り組んでいる会社同士で議論したいです。日本のROWEコミュニティを作っていきたいですね。

まずは「ROWE」にかわる素敵な名前を考えるところから。なんでしょうね。宿題です。

追記(2013年2月12日)

「完全成果主義(ROWE)で新卒採用は可能か?」という問いへの答えは「もちろん可能」なのです。問題は「可能かどうか」ではなく、難易度です。

実際、黒川さんはゼロベースに新卒入社して満4年になります。最初はアルバイトからでした。きっかけは上平先生の紹介です。

結局ぼくが気にしているのは、

  • 人的資本への投資を回収する前に辞められてしまうと、経営上深刻な痛手になります。
  • ゼロベースのような小さな会社には取れないリスクです。

ということなので、知人の紹介・推薦があれば採用しやすいです。『ソーシャル・リクルーティングから生まれるコミットメント』という文章に書いたように、人間関係がコミットメントにつながります。

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