完全成果報酬制

当社の報酬システムは完全成果報酬制です。毎月の固定給と、成果連動型の賞与を支給します。(※決算は6月、決算賞与の支給は7月)

〔なお、この文章を理解して頂くには、あらかじめセルフマネジメント・テクノロジーZaの説明を読んで頂く必要があります〕

目次

  • 個人採算制と完全成果報酬制の全体像
  • 固定給と完全成果報酬制
  • 最大の赤字リスクは「仕事がないこと」
  • 黒字ラインを超えてからが楽しみ
  • 付加価値を上げるための3つのポイント
  • 仕事を獲得する/作るための活動
    • 社内で仕事をもらう人
    • 社外で仕事をもらう人
    • 自ら事業を立ち上げる人
  • 本部による黒字化支援サービス

個人採算制と完全成果報酬制の全体像

Zaの個人採算制と、ゼロベースの完全成果報酬制とを組み合わせた全体像を説明します。

図解

個人採算表と報酬制度の全体像(※金額は一例です):売上1,500万円、売上原価204万円、付加価値1,296万円、本部費283万円、総報酬1,013万円、人件費988万円、社内預金25万円、経費等36万円、会社負担分の社保険料122万円、給与・賞与830万円、税・社保料184万円、可処分所得646万円

方程式

  • 売上 − 売上原価 = 付加価値
  • 付加価値 − 本部費 = 総報酬
  • 総報酬 − 人件費 = 社内預金
  • 人件費 − 経費等 − 会社負担分の社保料 = 給与・賞与
  • 給与・賞与 − 税・社保料 = 可処分所得

解説

報酬体系の全体像を解説していきます。

まずは売上から見ていきましょう。売上は自分だけの成果でしょうか。実際には他者に依頼(再委託・外注)した仕事も含まれているかもしれません。その分の金額を売上原価(または外注費)と呼びます。それを売上から差し引いた残りを、通常の企業会計では売上総利益と呼んでいますが、当社の個人採算表では「付加価値」と呼んでいます。1

付加価値に対して本部費がかかってきます。本部費を払った残りが総報酬です。なお、本部費は「付加価値×20%+2万円/月」と定義されています2。これによって当社の労働分配率(=人件費÷付加価値)は75%程度となっています3

世間では「給料の3倍稼がなければならない」などと言われます。しかし、会社によって、役職によって、実際の数字は異なってくるはずです。当社の場合は、基本給の設定額に応じて黒字ラインが自動的に算出されます。いくら稼げば黒字社員になるのか一目瞭然です。

次に、総報酬の内訳を見ていきます。当社では経費が自由に使えますから、「経費等」は事実上の報酬という性質が色濃くなります(例えば「借上社宅の家賃」なども含む)。また、「社内預金」は賞与や退職一時金として最終的には報酬になるものです。これらに会社負担分の社会保険料も加えたものを(「正味」の報酬ではないので)「総報酬」と呼んでいます。4

逆に、総報酬から会社負担分の社保料を引いたものが、世間の会社員の「年収」に相当すると言えるでしょう。5

固定給と完全成果報酬制

「完全成果報酬制」ということから、よく心配されるのですが、毎月の固定給はあります。

固定給の金額に応じて「黒字ライン」が決まります。固定給を低めに設定すれば、黒字ラインは下がります。逆もまた然りです。

個人採算が一時的に赤字になっても、すぐに給与が減ることはありませんので、どうかご安心ください。いったん赤字になっても、いずれ黒字に戻せるようなら問題ありません。

ただし、累積の赤字額が多額になれば、「戦力外」として解雇の可能性が高まります。その目安は「人件費1年分の赤字」です。これは「付加価値ゼロの月に相当する赤字の12ヶ月分」を意味します。

採用選考においては、固定給の希望額が高ければ高いほど、合格(内定)しにくくなります。ご自身の固定給希望額に見合った「入社後のパフォーマンス」を証明する必要性が増します。

次は赤字リスクについての説明です。

最大の赤字リスクは「仕事がないこと」

この制度において最大のリスクは「仕事がないこと」です。仕事がなければ「付加価値ゼロ」になります。

「付加価値ゼロ」のインパクトを理解するために、次の問いについて考えてみてください。もし、ある月の付加価値がゼロになったら、それを取り戻すのには何ヶ月かかるでしょうか?

仮に、ひと月あたりの人件費が50万円、黒字ラインが69万円、通常はひと月あたり80万円の付加価値を上げている人がいるとしましょう。この人の黒字マージンはひと月あたり11万円です。

人件費50万円、付加価値80万円の個人採算表

さて、この人が、ある月だけ「付加価値ゼロ」になったとして、その赤字を取り戻すには何ヶ月分の黒字が必要でしょうか? なんと6ヶ月分です(= 黒字ライン ÷ 黒字マージン)。

たったひと月分の「付加価値ゼロ」を取り戻すのに6ヶ月もかかるわけです。いかに「付加価値ゼロ」のインパクトが大きいかお分かりになるでしょう。

ちなみに、別の見方をすれば、「丸一ヶ月の休暇を取ること」がどれほど贅沢なことか、何十万円分の「機会費用」を払っていることになるかも、お分かりになるはずです。

また、「戦力外解雇」の目安になる「1年分の赤字」が、どれほどの重みかも理解できるはずです。(上の例をそのまま使えば)1年分の赤字を取り戻すには6年もかかるわけです。そして、大抵の場合、1年分もの赤字を作るまで成果を出せなかった人が、そこから急に毎月コンスタントに黒字を出せるようになるとは考えにくいのです。そもそも、「1年分の赤字」とは「1年分まったく働きがなかった」という意味であり、ふつうに働いていればありえない状態ですから。

赤字リスクについての話をまとめると、「仕事がないこと」が最大のリスクです。そして、その対策は「 なるべく仕事が途切れないよう計画的に受注すること 」となります。それについては後ほど改めて説明することにして、次は黒字ラインを超えたときの(ポジティブな)話です。

黒字ラインを超えてからが楽しみ

さて、さきほどの例の条件を少し変えてみましょう。もし付加価値が80万円/月から120万円/月に50%増えたとすると、黒字マージンはどうなるでしょうか? 11万円/月から51万円/月、なんと4.6倍になります。

人件費50万円、付加価値120万円の個人採算表

「付加価値(働き)の5割アップは、黒字マージンの4.6倍になる」

やや直感に反するかもしれませんが、下記のグラフを見れば一目瞭然ではないでしょうか。

付加価値と利益のグラフ
(※X軸は付加価値、Y軸は損益です。ここで損益の定義は「総報酬 - 人件費」です。)

黒字ラインを超えた部分の付加価値については、その8割が報酬になりますから、黒字ラインの達成に留まらず、どんどん稼いで頂きたいと思います。

さきほど、「丸一ヶ月の休暇を取ることは、何十万円もの機会費用を払う贅沢なことだ」と説明しました。しかし、いま見た例のように、ひと月あたりの人件費50万円に対して利益が41万円もあれば、数ヶ月ごとに丸一ヶ月の休暇を取っても余裕で黒字をキープできます。

黒字ラインを超えた部分(余裕、マージン)が大きいほど、働き方の自由度も増すと言えます。

あるいは、少し休暇を取った程度で赤字転落しないために、 固定給を必要以上に高くしないほうがいい とも言えます。

ここまでの説明から想像できる通り、赤字が続くとプレッシャーになり、ストレスになります。わざわざストレスを呼び込みやすい状況に自分の身をおくことは懸命ではありません。

さて、ここまでの説明で、完全成果報酬制における赤字と黒字について、理解を深めて頂けたことかと思います。次に、「どうすれば付加価値を上げられるか」「どうすればより多く稼げるか」について説明をします。

付加価値を上げるための3つのポイント

付加価値を上げるためのポイントは次の3つです。

第1に、 稼働率を上げること 6。つまり、仕事が途切れないように計画的に受注することです。そのためには、社内外でマーケティングやセールスの活動をしなければなりません。自分のスキルを知ってもらい、売り込むことです。

第2に、 値段を上げること 。つまり、自分の値段である「人月単価」の設定額を、定期的に値上げすることです。値上げしても発注してもらえるように、相応の努力をしなければなりません。「高くてもあの人に頼みたい」と言われるプロフェッショナルになるということです。

第3に、 効率を上げること 。同じ労働時間でも、仕事の処理能力を上げれば、より多くの仕事ができるようになります。そのために、業務プロセスやツールを改善するということです。

とくに1点目の「稼働率を上げること」が重要です。先述の通り、最大の赤字リスクは「仕事がないこと」ですから。次は、その点について詳しく説明します。

仕事を獲得する/作るための活動

ゼロベースでは、「黙っていれば仕事が降ってくる」わけではありません。「命令のない自由な職場」とは、同時に「誰もあなたに仕事を与える義務を負っていない職場」でもあります。何もせずに待っていても、「お好きな仕事を選んでください」とメニューが提示されることはありません。

「付加価値ゼロ」という状況は、「例外的なリスク」などではなく、むしろ「出発点」です。付加価値ゼロから出発して、黒字ラインの達成を、そしてさらなる利益の上積みを目指すのです。そのためには、兎にも角にも、仕事を獲得しなければ始まりません。

では、どうすれば仕事を獲得できるのでしょうか。

社内で仕事をもらう人

ご自身がエンジニアやデザイナーなら、営業担当者やプロデューサーのような「社外から仕事をとってくる人」から仕事をもらうことが多いでしょう。したがって、そういう人に向けた「社内営業」をしなければなりません。

「仕事をくれる人」の立場に立って考えてみれば、「スキルセットや仕事の好みが不明な人」には仕事を頼みにくいものです。

ですから、自身のスキルセットや「どんな仕事をしたいか」といった情報を、あらかじめ「仕事をくれそうな人」に伝えておくことが大事です。

例えば、スキルシートやポートフォリオを常に最新の状態に保ち、社内で共有しておくことは有効でしょう。そういった「社内マーケティング活動」の結果として商談が増え、仕事の受注につながるのです。

社外で仕事をもらう人

ご自身が営業担当者やプロデューサーならば、仕事は他社から受注することになるでしょう。そして、その仕事をエンジニアやデザイナーに再委託(社内取引)することになるでしょう。

もちろん、仕事の再委託先は、社外の企業や個人事業主でも構いません。取引相手を選ぶのは自由です。とはいえ、どうせなら同じ会社のメンバーでプロジェクトチームを結成して仕事をすることが、長期的には有利でしょう。 7

そのためには、日頃から社内のメンバーのスキルセットや好みを把握しておく必要があるでしょう。

自ら事業を立ち上げる人

上の2つは、いずれも「受託案件」の説明でした。もう一つ、「自分で事業を立ち上げる」という選択肢があります。

ゼロベースには「事業組合制度」があります。これはLLP(有限責任事業組合)制度を、ゼロベースの社内制度としてアレンジしたものです。簡単に言えば、「みんなでお金を出資し合って事業を立ち上げ、その事業から上がった利益を出資比率に応じて分配する仕組み」です。

この仕組を使えば、事業のプロデューサーだけでなく、エンジニアやデザイナーも出資をして、全員でリスクとリターンをシェアする形で、新規事業にコミットすることができます。

もちろん、事業が失敗すれば、出資金は回収できません。しかし、うまくすれば多額のリターンを得られるかもしれません。もちろん「事業売却」という出口もありえます。新規事業はロマンです。

さて、「仕事を獲得するための活動」と「仕事を作るための活動」について説明してきました。ここまでの説明で、ゼロベースで働くということがどういうことなのか、かなり理解して頂けたのではないかと思います。最後に、新入社員などの「赤字社員」に対する支援策について説明しておきます。

本部による黒字化支援サービス

ゼロベースの社員が安定的な黒字状態にない場合、ゼロベースの本部は以下のような「黒字化支援」を提供します:

  • 自営戦略の立案支援(キャリアカウンセリング、スキル分析、市場分析、スキル獲得計画など)
  • マーケティングの支援(商談を増やす施策)
  • セールスの支援(見積や契約の伴走)
  • コーチング(実務、座学、読書などの伴走)
  • トレーニング(教育、訓練、研修、および社外での受講費用の助成)

とくに新入社員には手厚い支援が必須だと考えており、安定的な黒字状態になるまで支援します。

とはいえ、「支援」であって「代行」ではありません。あくまでも主役はご自身です。依存してはいけません。 「経済的自立」(自営力) こそ、ゼロベースにおける美徳です。「自分の脚で立っている」という自負が、「プロフェッショナルとしての自信」と「自由な働き方」につながるのです。

補足

  • 当社に定期昇給という制度はありませんが、いつでも固定給の変更を申請できます。(申請額が高すぎる場合は不受理となります。)
  • 毎年7月の決算賞与のほか、申請に応じて臨時賞与を支給できます。(賞与の原資となる利益が足りない場合は不受理となります。)
  1. 付加価値には複数の定義が知られています。また、厳密に計算することは煩雑で、困難です。当社では、事業の実態に合わせた現実的な定義として、「付加価値=売上総利益」とみなしています。 

  2. 詳しく言うと、本部費の額面は月額5万円(年額60万円)なのですが、毎月3万円を会社負担で中小企業退職金共済(中退共)に積み立て・還元しているため、実質的な本部費負担額は月額2万円(年額24万円)となります。簡単に言えば、毎月3万円を本部費として天引きして、退職金として積み立てているようなものです。 

  3. 参考までに、平成30年版情報通信白書で情報通信業の労働分配率(2016年)のデータを見ると、ソフトウェア業で58.9%、情報処理・提供サービス業で57.2%となっています(出典)。当社では間接部門の無駄を取り除き効率的に経営しているので、労働分配率を比較的高くすることができています。 

  4. 会社負担分の社会保険料は、「会社が(優しいから?)払ってくれている」ものではありません。その人を雇わなければ発生しない人件費ですから、企業は人を雇う際に会社負担分の社保料も込みで人件費を計算し、その人を雇うかどうか判断しています。ですから「会社負担分」の社保料も、結局は労働者が負担していると考えるのが実態に合っています。また、もし個人事業主なら社会保険料は当然自分が全額負担するのであり、誰も半分負担してくれません。その意味でも、社保料は実質的に労働者本人が全額負担していると考えるべきです。「会社負担」という言葉は、社会の仕組みの現実から労働者の目を逸らすものであり、大変欺瞞的で、良くないものです。当社では、労働者の自立・自営・自由を促す考えから、「総報酬」という概念を定義し、用いています。 

  5. 厳密に言えば、当社における「総報酬ー社会保険料」と、世間の会社員の「年収」は異なります。当社の総報酬には「経費等」が含まれています。会社借上社宅家賃のような「普通は会社が負担してくれないような費用」も含まれる一方で、PC購入代金のような「普通は会社が負担してくれる費用」も含まれています。後者を含まない計算の方が、一般的な会社員の「年収」には近いかもしれません。ただ、実際にはこの区別は曖昧で、厳密な計算は事実上不可能です。 

  6. 稼働率というファクターの意味については、Zaにおける黒字社員で説明しています。 

  7. 同じようなメンバーで仕事を繰り返すことを通じて、コラボレーションの熟練度が上がっていきます。いわゆる「組織学習」の効果です。毎回異なるメンバーでプロジェクトをするより、組織学習を繰り返すほうが、長期的には仕事の品質と効率の両面において有利でしょう。