女性向け「フェムテック」アプリ
「フェムテック」とは「女性 female + 技術 tech」の造語であり、女性の(とくに健康の)課題を解決する技術のことです。
国内大手メーカーからの依頼を受け、フェムテック・アプリ開発プロジェクトにゼロベースから参画したのはデザイナー五十嵐とエンジニア田中の2名。
最小人数でデザイン、開発ディレクション、実装まで行いました。効果的なプロセスや予算の組み方についても積極的にアドバイスさせていただき、2名の職域は多方面に渡りました。
アプリ開発に取り組むクライアントは柔軟なスタンスで、組織の枠を超えて共につくるためのチームを結成。全員が全体像を意識しながら横断的にコラボレーションできました。
ビジョンはあっても正解が見えていない開発初期においては、小さなチームであることが重要です。小さなチームなら、メンバー全員がプロダクトオーナーに近い当事者意識を持てます。
柔軟に考え、機敏(アジャイル)に進められます。模索しやすい体制であるほど、事業者にとっても、プロダクトとプロセスの納得度は高くなります。
働く女性に寄り添うアプリを
近年、女性の社会進出に伴い、生活習慣の変化やストレスによる心身の不調を訴える方が増加しています。その事実を憂いていたクライアントは、女性に寄り添ったアプリの開発を決意します。
そこへ開発パートナーとして選ばれたのが、0→1の立ち上げに強いゼロベースでした。エンジニア田中とデザイナー五十嵐がデジタルプロダクトの専門家として技術面・デザイン面からアドバイスしつつ、自ら手も動かし、一気にプロトタイプ版アプリを立ち上げます。
このアプリは、ユーザーの身体に関するデリケートな情報を扱います。数多くの競合アプリが先行しており、ユーザーはちょっとした違和感ひとつで使うのをやめてしまうかもしれません。
本プロジェクトの最大の課題は、このセンシティブなテーマ性にありました。
だからこそ、「毎日つかう道具」として当たり前に使えるよう、シンプルに削ぎ落としたデザインとスムーズな操作性を目指しました。その結果、プロトタイプ版の時点でも、ほぼ完成の域にありました。
ユーザーにとってのアプリの体験価値
プロトタイプ版で、たくさんの女性にテスターとして協力いただき、アンケートとインタビューを実施しました。
その結果を分析して見えてきたのは、使いやすさだけではない、ユーザーにとってのアプリの体験価値でした。私たちはユーザーにどのような利用体験を届けられるのか。アプリを通じて彼女たちの日々をどのように変えていけるのか。開発チームの目線がそろい、目指すアプリの姿が見えた瞬間でした。
アプリを全面的に見直し、改善を実施。細かい調整も重ねて、ついに正式リリースしました。
プロダクトの継続的な成長へ
正式リリース後もアプリの機能を次々と拡張し、当初のスコープに留まらないフェムテック・アプリへと成長を遂げました。充実した機能を提供しながらも、シンプルな使いやすさを保つことで、ユーザーから高く評価され続けています。
チーム
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田中孝太郎
テクニカルディレクター2005年〜現在豊橋技術大学大学院 並列処理研究室を卒業後、組み込みソフトウェア開発会社、美術大学助手を経て2005年にゼロベースに参画。フルスタックエンジニアとしてバックエンド、フロントエンド、ネイティブアプリの開発を手掛けるほか、プロトタイプ制作からサービス開発のディレクションなど幅広く従事する。紙の本と電子書籍を同時に制作・配信可能なウェブサービス「BCCKS(ブックス)」では組版エンジン、編集エディタの開発を主導し同社の取締役も務める。2002年から現在まで女子美術大学にて情報メディアやデザインの領域で講師を務めるほか、2007年から10年間は東京芸術大学でもプログラミング教育の教鞭を執る。技術と文化、芸術を横断しながら活動し、書籍や雑誌での記事執筆も多数。 -
五十嵐佳奈
UXデザイナー/ディレクター2017年〜2025年産業技術大学院大学 人間中心デザイン修了。インターネット広告の事業会社にてウェブサービスや広告プラットフォームのUIデザインを担当。同時にデザインコミュニティやスタートアップ支援NPOを複数運営してきた。ゼロベースではサービス立ち上げ時の「一人目デザイナー」として、サービスデザインからUIデザインまで幅広く担当。案件分野は交通、ヘルスケア、HR、業務システムなど多様。デザインリサーチやワークショップも行う。多様な人と会話して、視野を広げることが好き。共訳書に『カラー・アクセシビリティ』『デザイニング・フォー・サービス “デザイン行為”を再定義する16の課題と未来への提言』、共著論文に『デジタルアーカイブをデザインする』など。学芸員資格保有。